
眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)の手術は、近視・遠視・乱視などの視力矯正を目的として眼内に特殊なレンズを挿入する治療法で、視力を改善する可逆的な手術として広く認知されています。しかし、手術を受けた一部の方から、夜間などの暗い環境で「ハロー(光がかすむ現象)」「グレア(眩しさや光の散乱)」「光輪視(光が輪状に見える症状)」といった視覚的な副作用が報告されることがあります。これらの症状は、眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)手術の特性や眼の光学的な変化に起因します。この記事では、手術後にハロー、グレアや光輪視が発生する理由とそのメカニズムを、医学的・光学的な観点から詳細に解説します。さらに、症状の軽減方法を説明します。
1. 眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)手術の概要と特徴
眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)手術は、眼球の虹彩と水晶体の間に柔軟で薄いレンズ(ICL / IPCL)を挿入し、視力を矯正する手術です。レーシックとは異なり、角膜を削らずに視力矯正を行うため、角膜が薄い人や強度近視の人にも適しています。
主な特徴は以下の通りです。
適応:
近視、乱視、遠視(遠視レンズは国内未承認レンズ)に対応しています。
視力回復効果:
通常矯正希望の場合は裸眼視力1.0~1.5程度を目指します。
可逆性:
レンズの取り外しが可能です。
費用:
両眼で約40万円~80万円(費用は乱視の有無やクリニックにより異なります)。
術後回復:
通常1~3ヶ月で眼の状態が安定します。
眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)手術は高い視力回復効果が期待されますが、ハロー、グレア、光輪視といった症状が発生することがあり、これらは特に夜間や暗い環境で顕著に現れることがあります。以下では、これらの症状が発生する理由とメカニズムをご説明致します。
2. ハロー、グレア、光輪視とは
ハロー、グレア、光輪視は視覚的な副作用として、眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)手術後に報告される代表的な症状です。
ハロー(Halo):
光源(例:車のヘッドライト、街灯)の周囲に光の輪や霞が見える現象で、特に夜間や暗い環境で顕著です。
グレア(Glare):
光源を過度に眩しく感じたり、光が散乱して見える現象です。対向車のライトや強い照明で不快感を伴います。
光輪視:
光源が輪状に広がって見えたり、複数の光のリングが見える症状です。ハローと類似していますが、より明確な輪の形状が特徴です。
これらの症状は、レンズ特有の光学的な変化や眼の構造的要因によって引き起こされます。以下に、そのメカニズムを詳細に解説します。
3. ハロー、グレア、光輪視が発生する理由とメカニズム
眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)手術後にハロー、グレアや光輪視が発生する理由は、レンズの設計、眼の光学特性、術後の眼の状態が複合的に関与しています。以下に、主要な原因とメカニズムを医学的・光学的な観点から説明します。
3.1 眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)の光学特性
眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)は、眼内で光を屈折させて網膜に焦点を合わせるレンズです。しかし、その光学特性がハロー、グレアを引き起こす要因となることがあります。
レンズのエッジ効果:
レンズの端部(エッジ)は、屈折率の急激な変化により光を散乱させる可能性があります。特に夜間、瞳孔が大きく開くと、レンズのエッジ部分に光が入射しやすくなり、散乱光がハローやグレアを引き起こします。
レンズの光学ゾーン:
眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)の光学ゾーン(光を正確に屈折させる中心部分)は、通常ICL5.5~6.1mm(IPCL6.6mm)の直径で設計されています。夜間、瞳孔がこれよりも大きく開く(6.0~8.0mm)と、光学ゾーン外に光が入り、散乱光や収差が発生し、グレアやハローの原因となります。
3.2 瞳孔サイズと夜間の影響
人間の瞳孔は、光量に応じてサイズが変化します。明るい環境では瞳孔が小さくなり、暗い環境では大きくなります。
手術後のハロー、グレアは、夜間や暗い環境で瞳孔が大きく開くことで顕著になります。
瞳孔と光学ゾーンのミスマッチ:
眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)の光学ゾーンが瞳孔径より小さい場合、瞳孔の外縁部を通る光がレンズの非光学ゾーン(周辺部)に当たり、散乱光や収差が発生します。これがハローの原因となります。
ホールの影響 :
ホールICLは、房水の循環を安定させ白内障・緑内障リスクを軽減させるためにレンズ中央に直径0.36mmほどの穴(KS-AquaPORT)が開いています。
結果として、光源の周囲に光の輪が発生します。
光輪視は術後約1ヶ月程度で慣れる事がほとんですが穴が原因で生じる症状のため残存します。
虹彩切開の影響:
遠視眼に対してのICL(眼内コンタクトレンズ)手術では、房水の流れを確保するため、虹彩に小さな穴(虹彩切開術)を設ける場合があります。この穴は通常視覚に影響しませんが、まれに光の散乱を助長し、グレアやハローを引き起こすことがあります。IPCLの場合は+3.0D程度の遠視まではセンターホールが設けられているため虹彩切開は不要となります。
3.3 角膜と眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)の相互作用
眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)手術は角膜を削らないため、角膜自体の光学特性は変化しませんが、ICLやIPCLと角膜の光学的な相互作用がハロー、グレアの原因となる場合があります。
球面収差:
ICL(眼内コンタクトレンズ)のレンズは球面レンズが主流ですが、角膜の形状や瞳孔の開き具合により球面収差(光の焦点がずれる現象)が発生し、光が散乱してハローやグレアが生じる場合があります。通常は角膜の球面収差を水晶体の負の球面収差で打消しているため眼球全体としての球面収差は小さいことがほとんどではありますが加齢により水晶体の球面収差が増加してくると角膜の球面収差を補正できなくなり球面収差によるハロー・グレアなどの症状が生じることがあります。
IPCLは非球面レンズのため比較的にハロー・グレア等が生じにくい設計となっています。
乱視の残存:
乱視矯正用ICL(トーリックICL)を使用しても、微細な乱視が残存する場合、夜間の光の散乱を感じることがあります。

3.4 術後の炎症や浮腫
眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)手術後、眼内の軽微な炎症や角膜の浮腫(むくみ)が一時的に発生することがあり、これがハロー、グレアの原因となる場合があります。
角膜浮腫:
手術直後の角膜浮腫は光の散乱を増加させ、ハローやグレアを引き起こします。ただし、通常は数週間で回復することがほとんどです。
炎症反応:
術後の軽い炎症が房水の透明度に影響を与え、光の散乱を助長する場合があります。点眼薬(抗炎症薬)で管理可能です。
眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)の位置異常:
まれに眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)が眼内でわずかにずれると、光の屈折に影響し、光輪視やハロー・グレアが発生します。
3.5 脳の適応過程
ハロー、グレアや光輪視は、眼の光学変化だけでなく、脳の視覚処理にも関連します。眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)手術後、脳が新しい視覚情報に適応する過程で、これらの症状が一時的に強く感じられることがあります。
神経適応:
脳は手術後の視覚変化に慣れるまで数週間~数ヶ月かかります。ハロー、グレアは術後早期に顕著ですが、時間が経つと軽減する場合が多いです。
コントラスト感度の変化:
眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)手術後、一般的にはコントラスト感度低下は認められないと評価されていますがごく稀にコントラスト感度(明暗の識別能力)が一時的に低下し、夜間の光が強く感じられることがあります。
4. ハロー、グレア、光輪視の軽減方法
ハロー、グレアや光輪視は、眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)手術後の一般的な副作用ですが、以下の方法で軽減が可能です。
4.1 術後の経過観察と適応
時間の経過:
多くの場合、ハロー、グレアは術後1~3ヶ月で軽減します。脳が新しい視覚環境に適応することで、生活に支障がないレベルまで順応することがほとんどです。
定期検診:
眼科医による定期検診で、眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)の位置や眼内圧、角膜の状態を確認します。異常があれば早期対応可能です。
4.2 点眼薬の使用
抗炎症薬:
術後の炎症を抑える点眼薬を使用し、炎症を治療することで光の散乱を最小限に抑えます。
4.3 生活上の工夫
夜間運転の注意:
夜間や暗い環境では、術直後は対向車のライトが眩しく感じられるため、どうしても気になる場合には運転時は防眩メガネ(偏光レンズ)を活用すると改善することがあります。
4.4 眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)の光学ゾーン あるいは の光学径
2025年7月現在、最新のICL(例:EVO+モデル)は、光学ゾーンを拡大(最大6.1mm)することで、球面収差を低減する設計が施されており、ハロー、グレアの発生率を抑える効果があります。 IPCLの光学ゾーンは6.6mmで設計されておりより軽減することが可能です。
4.5 レンズ交換や位置調整
まれに、ハロー、グレアが重度で生活に支障をきたす場合、眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)のサイズや位置を調整、またはレンズを交換する手術が行われる場合があります。
5. 医学的・技術的補足
5.1 光学収差の種類
ハロー・グレアは、主に球面収差やコマ収差(非対称な光のずれ)により起こります。ICL(眼内コンタクトレンズ)の設計改善(非球面レンズや拡大光学ゾーン)で、これらの収差をさらに低減する可能性はあります。
5.2 瞳孔サイズの個人差
瞳孔サイズは遺伝や年齢により異なり、若年層の人は瞳孔が大きく開きやすい傾向にあります。これがハロー、グレアのリスクを高めるため、特に強度近視のICLでは光学径が小さくなるので光学径が大きいIPCLが推奨されます。
5.3 術後炎症の管理
術後の軽い炎症は光の散乱を増やし、グレアを引き起こします。抗炎症点眼薬や定期検診で管理することで、症状を最小限に抑えられます。
6. 注意点
術前カウンセリング:
強度近視の場合レーシックと比較すると眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)ではハロー・グレア等はかなり抑制されますがある程度のハロー・グレアが生じる得ること、光輪視は残ることをよく理解納得した上で手術を受けるようにしましょう。
眼科医の選択:
経験豊富な医師を選び、最新の眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)を使用しましょう。
症状の報告:
多くの場合、術後数ヶ月で軽減(順応)すると考えられています。ただしレンズ特有の構造により、光輪視に関しては症状は残存するため生活に支障をきたすようであれば抜去することによって改善されます(可逆性)。その際はクリニックに相談しましょう。
眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)手術後にハロー、グレアや光輪視が発生する理由は、眼内コンタクトレンズ(ICL / IPCL)の光学特性(エッジ効果、光学ゾーン、ホールの影響)、瞳孔サイズの拡大、角膜との相互作用、術後の炎症、脳の適応過程に起因します。これらの症状は夜間や暗い環境で顕著ですが、時間の経過、点眼薬、生活上の工夫で軽減可能と考えられます。ハロー、グレアが気になる場合は、眼科医に相談しましょう。
品川近視クリニックは、ICL(眼内コンタクトレンズ)治療を開始してから14年、全国5院(東京/梅田/名古屋/福岡/札幌)に展開している、視力回復治療専門のクリニックです。
患者様お一人お一人に最も適した治療を、適正価格で患者様にご提供できるよう日々努力をしています。ICL(眼内コンタクトレンズ)に限らずレーシックや老眼治療、白内障治療(多焦点眼内レンズ挿入術)などの視力回復治療をお考えの方は、品川近視クリニックにお気軽にお問い合わせください。
更新日:2025年11月13日
監修者 東京院 院長 湯川 聡
(日本眼科学会専門医)
| 経歴 | |
|---|---|
| 1999年 | 帝京大学医学部卒 |
| 2001年 | 東京女子医大病院 眼科 |
| 2003年 | 埼玉済生会栗橋病院 出向 |
| 2005年 | 埼玉済生会川口病院 出向 |
| 2007年 | 品川近視クリニック |