
1. ICL(眼内コンタクトレンズ)の概要
ICL(Implantable Contact Lens)は、日本語で「眼内コンタクトレンズ」と呼ばれる視力矯正手術の一種です。正式名称は「有水晶体眼内レンズ挿入術」で、眼内にある水晶体を残したまま、虹彩(茶目の部分)と水晶体の間に特殊なレンズを挿入し、近視、遠視、乱視といった屈折異常を矯正します。
このレンズは、生体適合性の高い「Collamerコラマー」という素材で作られており、長期的に眼内に留まることができるのが特徴です。
コラマーは「コラーゲン+ポリマー」の合成素材で、柔軟性があり、眼球の中で安定的に機能します。これにより、メガネやコンタクトレンズに頼らず、裸眼でクリアな視力を得ることが可能です。
手術方法は、角膜と強膜の境に3mm程度の小さな切開を作り、そこから折りたたまれたレンズを眼内に挿入し、虹彩と水晶体の間に固定します。
手術時間は片眼つき5~10分ほどで、入院の必要はありません。
LASIKと異なり角膜の形状を変えることなく視力を矯正できる点が大きな特徴で、水晶体はそのまま残り、レンズとしての役割を果たすため、調節機能も失うことはありません。
近年では「永久コンタクトレンズ」とも呼ばれ、角膜を削ることで視力矯正ができる従来のレーシック(LASIK: Laser-Assisted in Situ Keratomileusis)などと並び注目されています。
世界では1986年に最初のレンズが開発され、2024年時には300万眼以上の手術が行われており、75カ国以上で承認されています。日本では1997年に導入され、臨床試験を経て2010年2月に高度医療機器として厚生労働省に承認されました。
2. ICL(眼内コンタクトレンズ)の歴史と進化
ICL(眼内コンタクトレンズ)の歴史:
ICLの起源は1980年代に遡ります。眼内にレンズを挿入して視力を矯正する技術は、レーシック(1990年報告)より早く、1986年に最初のICL(眼内コンタクトレンズ)がインプラントされました。
しかし初期モデルでは、房水(眼内の液体)の循環不良が原因で、白内障や緑内障のリスクが懸念され、改良が求められました。
そんな中、日本では1997年にICL(眼内コンタクトレンズ)が初めて導入され、2003年から臨床試験を開始し、慎重な検証の結果、2010年2月に高度医療機器として厚生労働省に承認されました。
当初は房水の流れが不十分で、白内障の発生率が1~2%程度報告されましたが、現在では技術の進歩で安全性が向上しています。
特にその大きなきっかけとなったのが、ホールICLの登場です。 2007年、日本の眼科医がレンズ中央に0.36mmの小さな穴を開けた「Hole ICL(ICL KS-Aqua PORT)」を開発し、世界初の移植を実施しました。この穴により房水の自然な循環が確保され、白内障や緑内障のリスクが大幅に減少しました。
さらなる進化:EVO+とIPCL
2016年、STAAR Surgical社が「EVO+ Visian ICL」を開発。レンズ全体のサイズは変わらず、光学部(視力を矯正する部分)を拡大し、夜間のハロー・グレア(光のにじみや眩しさ)を軽減しました。一方、IPCL(Implantable Phakic Contact Lens)は、EyeOL社が発売し、2013年に欧州CEマークを取得しています。遠近両用(老眼対応)の多焦点レンズも含まれており、日本では2015年から使用が始まり、2025年時点では30カ国以上で使用され10万件以上の症例が報告されています。
3. ICL(眼内コンタクトレンズ)の仕組み
基本原理:
人間の眼は、角膜と水晶体で映像を屈折させて、網膜にピントを合わせる事により見る事が出来ます。近視や遠視、乱視は、角膜や水晶体の屈折力が強すぎたり弱すぎたりする事により網膜にピントが合わず、ぼやけて見える状態です。
ICL(眼内コンタクトレンズ)は、コラマー(Collamer)という生体適合性の高い素材でできたレンズを眼内に挿入する事で、屈折力を矯正することにより裸眼視力回復可能な治療法です。
レンズの構造:
- 光学部: 視力を矯正する中心部分です。ホールICLでは、中央に1つのホールと周辺に4~7つの小さな穴があり、房水の流れを阻害しないように作られています。
- 支持部: レンズを眼内で安定させる脚部です。ICL(眼内コンタクトレンズ)は4本、IPCLは6本の支持部を持ち、ズレを防ぎます。
- 素材: ICL(眼内コンタクトレンズ)はコラマー(コラーゲンとポリマーの合成素材)、IPCLはハイブリッド親水性アクリル製。どちらも生体適合性が高く、紫外線を90%以上カットし、タンパク質の付着を抑制します。
挿入位置:
ICL(眼内コンタクトレンズ)は後房型眼内レンズで、虹彩(茶目の部分)と水晶体の間である「後房」に固定されます。
一方、前房型眼内レンズ(例:アルチザン、アルチフレックス)と呼ばれる角膜と虹彩の間に挿入されるレンズもありますが、現在は後房型が安全性と効果の面で主流となっています。
4. ICL(眼内コンタクトレンズ)のメリットとデメリット

ICL(眼内コンタクトレンズ)のメリット
以下のように評価されています。
- 角膜を削らない
ICL(眼内コンタクトレンズ)は3mmの小さな切開でレンズを挿入。特にレーシックが不適応となりやすい角膜が薄い方や円錐角膜の方でも適応可能です。 - 可逆性
矯正後の見え方等に不具合を感じた場合、レンズを摘出して元の状態に戻せます。 - 近視の戻りが少ない
ICL(眼内コンタクトレンズ)は長期的な視力安定性が報告されており、クリアな視力が持続しやすいです。 - 見え方の質が高い
高次収差(不正乱視)が少なく、鮮やかな視力が得られます。夜間のハロー・グレア・コントラスト感度の低下も軽減されています。 - メンテナンスフリー
外部コンタクトレンズのような装着・取り外しや洗浄が不要。眼内に固定され、スポーツや旅行でも安心です。 - ドライアイのリスクが低い
レーシックは角膜の神経を切るためドライアイが起きやすい傾向はありますが、ICL(眼内コンタクトレンズ)は神経への影響が少なく、術後の快適性が保たれます。 - 将来の治療に影響しない
レンズは取り外し可能で、将来的に白内障や緑内障の手術が必要になっても、従来通りの治療が可能です。
ICL(眼内コンタクトレンズ)のデメリット
非常に安全性の高いICL(眼内コンタクトレンズ)ですが、デメリットとして以下のようなことが考えられます。
コストが高い
ICL(眼内コンタクトレンズ)は自費診療であり、両眼で40万〜80万円が一般的です。保険適用外のため、金銭的負担は大きいです。クリニックによっては、両眼40万円程度で手術ができるクリニックもあります。ただし、乱視用や特殊度数レンズは追加料金(5万~11万円)がかかる場合もあるので注意が必要です。
さらに術前や術後の検査費用等もかかる場合がありますので、事前に確認しましょう。- 眼内のリスク
レーシックが角膜(眼の外側)に対してリスクがあるように、ICLは眼内(眼の内側)に対してリスクがあります。ICL(眼内コンタクトレンズ)は稀ではありますが水晶体の近くにレンズを挿入する為、白内障になるリスクがあります。また、レンズを挿入する事で眼圧(眼の内側の圧力)が上がり、緑内障になるリスクもあります。
その他- 眼内炎
術後の傷口から細菌が侵入し、炎症や視力低下、痛みを引き起こすリスク。発生率は低く、点眼薬や抗生剤で対応。 - ハロー・グレア
夜間に光がにじんだり眩しく見えたりする現象。EVO+やホールICL(眼内コンタクトレンズ)で改善されていますが、完全には防げない場合もあります。 - レンズの偏位や回旋
強い衝撃でレンズがずれることが稀にあり、乱視用レンズでは視力に影響することがあります。位置修正によりほとんどの場合は修正可能ではありますが再処置が必要な場合もあります。 - 角膜内皮細胞の減少
眼の表面を保護する内皮細胞が減る可能性。適応検査で細胞密度を確認し、基準以下なら手術は不可となります。
- 眼内炎
- 永久的な矯正ではない(近視進行の予防にはならない)
視力は年齢とともに変化する可能性があるため、ICL(眼内コンタクトレンズ)を入れても将来的に屈折が変化する可能性や老眼や白内障が進行する可能性は否定できません。 - 定期的な検診が必要
眼内に人工物(レンズ)が入っているため、定期的に眼科検診を受ける必要があります。特に角膜内皮細胞の減少リスクをモニタリングすることが重要です。 - 待機時間
レンズは個々の目に合わせて海外で製作されるため、1~3か月の待ち時間が必要な場合があります。(乱視なしのレンズであれば日本国内にstaar JAPANが在庫レンズを確保しているため比較的早期に手術することも可能です) - 老眼への影響
40歳以降から老眼が進むと、遠くは見えても近くにピントが合わず、老眼鏡が必要になる可能性があります。既に老眼を生じている方には遠近両用IPCLが選択肢として挙げられます。
5. 日常生活の改善(QOLの向上)

ICL(眼内コンタクトレンズ)手術を受けることで、日常生活が改善されます。
- 朝の快適さ: 起床後すぐに見えるため、メガネを探したりコンタクトを装着したりする手間が不要になります。
- 災害時の安心: 地震などでメガネやコンタクトがなくても、裸眼で行動可能です。
- アクティブな生活: スイミングや登山など、コンタクトのズレや紛失を気にせず楽しめます。
- コンタクトレンズ費用が削減
1カ月5000円程度のソフトコンタクトレンズを20年使用すると、その額は120万となります。ICL(眼内コンタクトレンズ)ならばその費用を大きく削減できるメリットがあります。
6. ICL(眼内コンタクトレンズ)の適応条件
ICL(眼内コンタクトレンズ)は幅広い方に適用可能ですが、以下の条件があります。
- 年齢: 原則21歳以上です。近視進行の可能性は完全には否定できません。
- 度数: 近視は-6.0D以上を推奨とし、-3D以上-6D未満の中等度近視及び-15Dを超える強度近視には慎重適応。乱視は-6.0Dまで矯正可能です。
- 目の状態:
- 前房深度(角膜と水晶体の距離)が2.8mm以上。
- 角膜内皮細胞密度が基準値以上。
- 視力が安定している。
- 不適応:
- 妊娠中の方。
- 重度の糖尿病や全身性の結合組織疾患など、治癒に影響する疾患。
- 白内障など既存の眼疾患。
7. ICL(眼内コンタクトレンズ)手術の流れ
適応検査
- 角膜形状解析、視力検査・眼圧測定、眼底検査、前房深度検査など10種類以上の精密検査(3~4時間)。
- コンタクト使用者は、ハードなら2週間、ソフトなら3日間装用を中止(乱視用ソフトは7日間中止)。
レンズ発注
- レンズは度数や眼のサイズに合わせてオーダーします。
- 適応検査診察時に矯正目標、メリット、デメリットについて最終確認します。
手術
- 両眼で10~20分の日帰り手術です。
- 点眼麻酔と前房内麻酔で痛みを抑制します。
- 3mmの切開からレンズを挿入、縫合不要で自然治癒します。
術後
- 休憩後、診察で問題なければ帰宅可能です。
- 翌日、1週間、3か月~1年の定期検診で視力や感染、内皮細胞減少の有無をチェックします。
- 術後数日は激しい運動や目をこする行為を避け、点眼薬を指示通り使用してください。
8. 費用とアフターケア
- 費用: 両眼で40万~80万円(費用は乱視の有無やクリニックにより異なります)。乱視用や特殊レンズは追加料金(5万~11万円)がかかります。
- 保険: 自由診療で保険適用外です。一部の医療保険がカバーする場合もあるので加入している保険会社にお問い合わせください。
- アフターケア: 術後1か月~3年の検診が無料のクリニック多く、レンズ交換や再手術も可能です(保障内容はクリニックにより異なります)。
9. 最近の進展(2025年時点)
- 実績: 世界で300万眼以上の実績があります。
- 新技術: EVO+ Visian ICLは光学部拡大で夜間の視機能を改善しています。
- 安全性: ホールICLで合併症のリスクが以前と比較してかなり低下しています。
- 2,192例4,311眼(2016~2022年)のデータで、5年以上の裸眼視力平均1.2以上と安定しています。
- 認定医: ICL(眼内コンタクトレンズ)手術には認定医資格が必要です。
10. ICL(眼内コンタクトレンズ)が向いている人・向いていない人
向いている人
- 強度近視(-6.0D以上)や強度乱視の方。
- 角膜が薄く、レーシックが不適応な方。
- メガネやコンタクトの不便さから解放されたい方。
- 長期的な視力安定を希望する方。
- 角膜を削りたくない方
向いていない人
- 近視が進行中の若年層。
- 老眼が進み、近くを見るニーズが高い方(遠近両用レンズを検討)。
- 前房深度(眼内の空間)が狭い方。
- 眼疾患や全身疾患でリスクが高い方。
11. まとめ
ICL(眼内コンタクトレンズ)は、近視、遠視、乱視を矯正する安全性の高い手術です。1980年代の開発以来、ホールICLやEVO+、IPCLの進化で安全性と効果が向上し、世界で300万眼以上の実績があります。メリットは可逆性、広範な度数対応、高品質な視力、ドライアイリスクの低さなど。反面、高額な費用や稀な合併症(眼内炎、ハロー・グレアなど)の可能性も考慮が必要です。
適応検査で目の状態を確認し、手術実績が多いクリニックを選ぶことをお勧めします。2025年現在、老眼対応レンズも登場し、幅広いニーズに対応しています。メガネやコンタクトの煩わしさから解放され、裸眼で快適な生活を求める方は、医師と相談してICL(眼内コンタクトレンズ)を検討してみては如何でしょうか。
品川近視クリニックは、ICL(眼内コンタクトレンズ)治療を開始してから14年、全国5院(東京/梅田/名古屋/福岡/札幌)に展開している、視力回復治療専門のクリニックです。 患者様お一人お一人に最も適した治療を、適正価格で患者様にご提供できるよう日々努力をしています。ICL(眼内コンタクトレンズ)に限らずレーシックや老眼治療、白内障治療(多焦点眼内レンズ挿入術)などの視力回復治療をお考えの方は、品川近視クリニックにお気軽にお問い合わせください。
更新日:2025年11月13日
監修者 東京院 院長 湯川 聡
(日本眼科学会専門医)
| 経歴 | |
|---|---|
| 1999年 | 帝京大学医学部卒 |
| 2001年 | 東京女子医大病院 眼科 |
| 2003年 | 埼玉済生会栗橋病院 出向 |
| 2005年 | 埼玉済生会川口病院 出向 |
| 2007年 | 品川近視クリニック |